
宇宙は丸くて平たい
屋根がドーム型に世界をおおっている
きらめく星や太陽で飾られた屋根
この天を支えるのは巨大な柱
天体はそれを中心に回転している
天地をつなぐ柱 それは大きな木
天に届くまで枝を広げ 地底深くへと根を伸ばす
天空 地上 地下のあらゆる命の 掛け橋となっている
宇宙の木 運命の木
葉にすべての人の人生が 書きこまれている
「森の精霊と旅をする」より

あかるい空のもと ボートがいっそう
ゆめみごこちで たゆたいすすむ
七月の とある夕ぐれ
りょうわきには いとけない三にんむすめ
まなこきらきら 耳そばだてて
たいないおはなしを よろこびむかえ
すんだあの空は とうにいろあせ
こだまはきえ 思い出はほろび
秋のしもに 七月はあえなくさったけれど
わたしの目にはいまも 大空のもと
アリスがいきいきとうごいてやまない
さめてはみえぬ まぼろしのそのおもかげ
がんぜないものたちは なおもおはなしをと
まなこきらきら 耳そばだてて
あいくるしくにじりよってくるのだ
あのこたちは ふしいの国にねそべり
夢のうちにあけくれている
夢のうちに 夏はあまたたびめぐり
いつまでも ながれをただよいくだり
こんじきのひかりのうちを たゆたう
いのちとは 夢 でなくてどうする?
ルイス.キャロル「アリス.わが愛」 矢川澄子 訳

沈黙の<聖女>は おだやかに悲しみ
ひきさかれてもなお完全
追憶のバラ
忘却のバラ
力つきても なお命をあたえ
悩みながらも 心おだやかに
ただ一本の薔薇が園となり
そこに 満たされぬ愛の苦しみが終わる
終わりなき旅の終わり
言葉なき言葉の語らい
聖母の園に恵みあれ...................
T.S.エリオット「聖灰水曜日」より
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「灰の水曜日」とは四旬節の第一日目のことで、キリスト教徒が過去の罪を悔い、現世から神の世界へとふりむくために祈りを捧げる日。
聖書では、「灰」は悲しみや悔い改め、そして死を意味します。
「すべてはひとつのところに行く
すべては塵から成り.すべては塵に返る」
コヘレトの言葉3章20節
Ashes to ashes; Dust to dust
