ノヴァーリス 夢の形象に寄せて



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読めば読むほどノヴァーリスの迷宮へ。


まるで終わりのない旅をしているように。


それは紛れもなく自分自身を見いだす旅。


もう一度読もう。

いや何度も読もう。


ノヴァーリスを探して …








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「純粋な心情は光にたとえられ … 詩人は純粋な銅(はがね)であり、もろいガラス繊維のように感じやすく、しかも欠けない火打石のように固くもある」


ノヴァーリス「青い花」より 青山隆夫訳


心情と分別のバランス

老詩人クリングゾールはそのどちらにも偏ってはいけないと示唆する。



ベンヤミンはエッセイ「物語作者」の中で、〈物語る〉という技術は、「魂と目と手の間に現れるある種の調和によって授けられるもの」と語るヴァレリーの言葉に触れる。


ベンヤミンの言う「手仕事の輪の中で豊かに永らえていく物語(伝達の形式)」。


それはノヴァーリスの思想に共鳴する。





パウル・ツェランは詩論の中で「注意深さとは『魂のおのずからなる祈り』である」というベンヤミンの言葉に触れる。


それは「注意深さ」を、自らとは異質なものに向ける救済、変革、新たな創造への途上とするノヴァーリスの思考に重なる。


注意深さとは、究極の優しさであるとシンプルに私はみる。




小説「青い花」の目論見は「ポエジーの神化 / 礼讃である」。


ノヴァーリス(ティーク宛書簡より)










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揺籠のなかの愛ー夢。

〈理性ー空想。悟性。記憶。心。〉


ノヴァーリス「青い花」

草案メモより







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「詩は、子供とみなされてきた。

ちょうど『システィーナの聖母』

の下に描かれた童子天使のような子供に .. 」


ノヴァーリス「一般草稿」より


ノヴァーリスが感銘したラファエロの『システィーナの聖母』。


ドレスデンで観た壮大な絵の中には無数の天使たちの顔が!

圧倒されたことを思い出す。







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「われわれの言語ー

それは当初ははるかに音楽的であったが、しだいにかくも散文的にーかくも音響を失ったのだ。

… それはもう一度歌にならなければならない。」


ノヴァーリス「一般草稿」より







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詩人の言葉は音響である …


ノヴァーリス「準備録」より







「愛する心」にとって死者は喪われない。


「死は、終わりであり始まり、分裂であり緊密な自己統合である」


ノヴァーリス「花粉」より


死者は生者に、生と死を統合する創造的想像力、詩的想像力、時間を超越する〈永遠〉の体験をもたらす。





ノヴァーリスは哲学を、思索へのひたむきな愛の証であると。


一般草稿より








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「愛のおかれた状況は、すべての人にとっていっさいであり、いっさいであらねばならない。

だから愛とは自我であり、あらゆる努力の結晶なのだ」


ノヴァーリス「一般草稿」より


慈愛、祈り … 昇華された愛は、私という自我になる。








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思考は感情の見る夢 …


ノヴァーリス「サイスの弟子たち」より




「感情の元素とは内的な光 … 」


ノヴァーリス「サイスの弟子たち」より


心に響く言葉。







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「自然の内なる音楽を理解し、外なる調和を感じとるための感菅 … 」


ノヴァーリス「サイスの弟子たち」より


虫の鳴き声、雨音 …

ただありのままに耳を澄ましたい。





新しき道も最後には聖なる故郷にたどりつく。


ノヴァーリス「サイスの弟子たち」より




本を読むとは「憧れ」を感知すること。

ふとそんなことを思った。





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メーテルリンクはノヴァーリスを「精神の究極の表現者」と名づけた。


青い鳥から青い花へ …


展示の流れが『青』に導かれていることを感じます。


〈青い鳥〉の真髄は、ノヴァーリスの〈青い花〉〈ヒヤシンスと花薔薇のメルヒェン〉 … から巡られて。








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「内的な光は屈折してより美しく、より強烈な色彩となる。そうなれば、人間の心の内に星が輝き出て、いま自分の眼が見ている境界や地平を超えて、もっとありありと、もっと多彩に、まったき世界を感じることができるだろう。」


ノヴァーリス「サイスの弟子たち」より(今泉文子訳)




眠りは見えざる大海の満ち潮

目覚めは引き潮の始まり


母なる水の子守唄に耳を傾け

波のように生きる


ノヴァーリスを詩のように味わう。


その思索を歌のように …







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「すべての見えるものは見えないものに、聞こえるものは聞こえないものに、感じられるものは感じられないものに、考えられるものは考えられないものに 触れている … 」


ノヴァーリス 「断章」より


感官に注意深くあること。

ノヴァーリスを読む中で宮沢賢治の思考が私の中で深く重なる。



アラユルコトヲ

ジブンヲカンジョウニ入レズニヨクミキキシワカリ

ソシテワスレズ …


宮沢賢治「雨ニモマケズ」より







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魂の座は、内界と外界が接するところにある。


ノヴァーリス「花粉」より






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「わたしたちは宇宙万有を経めぐる夢を見るー

だとすれば宇宙万有はわたしたちの内部にあるのではないか。

内部へと神秘に満ちた道が通じる。」


ノヴァーリス「花粉」より







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「追想や予感、あるいは未来を思い描くことほどに、詩的なものはない。」


ノヴァーリス「花粉」より





「精神と美がそろうところでは、あらゆる自然物のうちでも最良のものが、同心円状に揺れ動きながら集積していく。」


ノヴァーリス「花粉」より







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「ポエジーとは、耳をそばだてるようにしてそれを聞き取り、言語に持ちきたすべきもの …」


そしてノヴァーリスは長編小説「青い花」の執筆にとりかかる。






by silent_music | 2023-09-15 01:21 | days