ショパンとリスト ~ その友情と愛 ~
2021年 11月 28日高野麻衣さんが脚本を担当した「リーディングシング『F ショパンとリスト』の公演を拝見。
感動に涙が溢れました。
ショパンとリスト、半身のような2人の天才の生涯に渡る友情!
その余韻を映すように、ショパンが愛したクリスマスキャロル、アドベントに奏でられるポーランドのコレンダ〈眠れ 幼な子イエスさま〉が通奏低音のように聴こえてきます。
おやすみイエスさま
わたしの真珠 ♪
★
色合いが奇跡のように絡み合うショパンの美しい青い瞳。
繊細な憂いを宿し、ローソクの光のような静けさを纏うその心の奥には、祖国への愛国心、闘う弾丸をピアノに潜ませたショパンの根源的な哀しみが。
ショパンにとってピアノは言葉の代わり。
喜びを打ち明ける日記、悲しみに立ち向かう唯一の武器。
自分の言葉(音楽)で人々の心を動かしたい。
そのためにできることならなんでもしたい。
失くしてしまった故郷を取り戻すように。
それゆえに、言葉のように奏でられたショパンの音色はどこまでも深い。
無限に …
ショパンとリスト、二人は出会い惹かれあい友情を捧げ合う。
リストはショパンの演奏を聞き、再び演奏会への意欲を持つ。
そしてショパンは、リストが弾く自分の曲が一番好きだと伝える。
リストは家族を得て演奏会に情熱を傾け人々を圧倒させていた。
一方ショパンは、詩作するようにピアノに向かい孤独と苦悩の道を人知れず生きていた。
祖国ポーランドに翻弄された癒えぬ傷を負いながら。
それを覆い隠せるのはただひとつ、音楽という普遍だけ。
それぞれの道を生きながら変わらず紡がれてきた友情。
しかしある日、リストはショパンのもう一つの顔を知る。
密命を受けパリに住むショパン。
自分の身代わりとなって銃殺された友人ユゼフ。
十字架を背負う苦しみ、暗闇のような孤独。
ショパンの告白を聞いたこの日から、リストはその傷を分かち支える唯一の人となった。
年月を経てもショパンへ寄せるリストの畏敬の念は変わらない。
海の波は同じ高さで打ち寄せているように見えるが10番目の波は常に他の波よりも高い。
この10番目の波に乗せられて誰よりも高く遠くへより遠くへと運ばれる人がいる。
「ショパンは10番目の波だ!」とリストは言う。
ショパンを凌ぐ力、才能はどこにもない。
だからきっと未来へと運ばれる。
音楽家にとって一番の喜びは自分の作品が永遠に受け継がれていくこと。
世界中で輝かしく活躍するリスト。
ショパンの衰弱。
久しぶりの再会は二人の対照を映す。
しかし心の苦しみから解放されたショパンは平安に満ちている。
ユゼフの最後の言葉を思い出したというショパン。
「人には一人ひとりの役割がある。
君の役割は音楽。
音楽が消えることはない。」
ずっと一人で背負ってきた十字架を、リストが見つけだしその苦しみを分かち支えてくれたから救われたと、ショパンは感謝する。
夢や希望は自分の中にある。
問い続けることをやめるな。
自分が正しいと思うことに嘘をつくな。
そして忘れないでほしい、君が弾く俺の曲が一番好きだということを。
俺たちまた会えたな。
会えるさ、いつでも会える。
これからはずっといっしょだ。
おれたちはどこまでも一緒だ。
ショパンの死の一年後リストが書いた一冊の本。
それは自分自身が救われるために書かずにはいられなかった手記だという。
ショパンへの思慕、畏敬の念、そして愛!を生涯持ち続けたリスト。
リストへ宛てた最後の手紙にはこう記されている。
親愛なるF リストへ
今の自分に後悔はない。
音楽という使命にすべてを捧げた。
名前は忘れ去られても、ただ自分の音楽が誰かの心を震わせ彼ら自身の新たな物語となって生き続けてくれればそれで良い。
十字架を背負う自分の苦しみ、暗闇のような孤独を分かち合ってくれたのは、ただ一人あなただけだった。
F ショパンより
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あらためてリスト著「フレデリック・ショパン──その情熱と悲哀 」を読んでみたいと思います。