マリアへのお告げ

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                        Heinrich Vogeler 「受胎告知」

天使が入ってきたことに 驚いたのではない
若者の姿をした天使が その顔をマリアの間近に傾け
天使の眼差しと 見あげるマリアの眼差しとがあい撃って
あたかも 不意に下界の一切が空無と化したかにみえ
いく百万の人びとが目にとめ 駆りたて 支えた一切が
ふたりのなかに殺到したかにみえるのだった .... ただマリアと天使とが
視ることと視られるものとが 眼と眼との享受とが
ただこの場にみられるだけ ほかにはないことであった
そうなのだ 驚かしたのは このことであった
そして マリアと天使とは ふたりとも驚いたのであった

それから 天使は みずからの旋律を歌った

                      「マリアへのお告げ」より ライナー・マリア・リルケ

リルケの「マリアの生涯」.....
この美しい詩集を私は何度読み返していることでしょう

ハインリッヒ・フォーゲラーの挿絵(銅版画)には
天使のお告げを静かに受容するマリアが
清らかな少女のように描かれています

御子を宿すという宿命
超越されたその哀しみ 痛み ........

詩の中から立ち昇る言葉に心震えながら
私は天使の歌(旋律)を聴き澄まします


by silent_music | 2013-02-07 03:25 | days