聖母教会 慈愛のまなざし


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その夕方、彼は通りすがりにノートルダム教会に入った。
死にとりつかれたその性格のためか、この教会は彼が好んでしばしば通うところだった。
内壁にも床の上にも、いたるところに平墓石があって、そこには死者の顔や磨滅してしまった名前や、やはり石の傷口のように蝕まれた碑銘が刻まれていた..... ここでは死そのものが死によって抹消されていた.....

しかし、すぐそばでは生の空しさが、死の中に永遠に生きつづける愛の、慰め力づけてくれる幻影によって明るく照らしだされていた。
このためにこそ、ユーグはしばしばこの教会に詣でたのだ。
それはシャルル勇胆公とその娘のマリ・ド・ブルゴーニュの名高い墓で、脇聖堂の奥にあった。
なんとその墓は人の心を動かすことか! とくにあのやさしい王女は。

                       「死都ブルージュ」より

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死にとりつかれながら
生への憧憬を宿す

その象徴となったのが聖母教会の優しい眼差し




by silent_music | 2012-10-21 23:11 | days